中日新聞社で,欧米におけるメディア事情の分析結果をテーマにした講演を行いました。

平成30年2月28日(水),グローバルメディア研究センター長の中村登志哉教授は中日新聞本社電子メディア局(名古屋市)の招聘により「欧米に見るメディア事情~『ポストトゥルース』の時代」と題する講演を行いました。
この講演会は,林寛子・同社取締役電子電波担当や栗林茂・電子メディア局長ら同新聞社幹部のほか、記者らもあわせて約70名が出席しました。
 
中村教授はこの講演会で「世論形成において客観的事実ではなく、虚偽であっても個人の感情に訴えるものが強い影響力を持つ」とされる「ポストトゥルース(Post-Truth)」の時代を迎えたと指摘されることが多い現在、欧州では右派ポピュリスト政党の伸長が著しく、とりわけ欧州一の大国ドイツで政治的混乱が長引いていることを、これまでの研究成果を基に説明しました。
 
また、中村教授は,ソーシャル・メディア(SNS)などを使って、中東から流入した大量の難民に対する反発を煽る偽(フェイク)ニュースやヘイト・スピーチが氾濫している実情も紹介しました。
具体的な事例として,ベルリンの難民キャンプを視察したメルケル首相と一緒に写真を撮影したばかりに写真を加工され、フェイスブック上などでテロリストとして情報を流されるなど、過酷な差別を強いられて苦しむシリア難民の青年が昨年、SNSの「フェイスブック」に対し、写真の削除を求める仮処分を裁判所に申請するなど、深刻な人権侵害が少なからず発生していることを解説しました。

 
この観点では,このほかにも国外からの情報操作が疑われる事案もあり,世界的に問題化しています。こうしたことを背景に、ドイツでは先進国に先駆けて、SNS上におけるヘイト・スピーチや偽ニュースを規制する所謂「SNS法」が昨年10月に施行される事態になった経緯とあわせて、同教授から同法の概要を紹介しました。
 
この講演会の最後に中村教授は、SNSに関するドイツの対応を分析して日本への示唆を得る機会とすべきであるとし、既存メディアが本質に根差した報道を続けていくためには、複数の情報源からの確認を徹底することや、専門記者の育成、ファクトチェック部署の設置など、時代に即した対応が急務であることを指摘しました。
 
質疑応答では、この話題に興味を持っている記者から積極的な質問があり,SNS上の偽ニュースや情報操作などをどう報道すべきか、などについて熱心な議論が交わされました。

 

             中村登志哉教授による講演会の様子
 

◇情報学研究科附属グローバルメディア研究センターホームページ
 http://global.si.i.nagoya-u.ac.jp/gmrc/index.html

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