名古屋大学大学院情報学研究科の有田 隆也 教授、鈴木 麗璽 准教授らの研究グループは、大規模言語モデル(LLM)を用いた対話AIの性格特性を進化させることに成功しました。
近年、ChatGPTのようなLLMに基づく対話AIエージェントを用いたサービスが急速に社会に浸透し、身近な存在になりつつあります。本研究では、LLMが任意の性格を持った人のように振る舞うことが得意な性質を利用して、様々な性格を持ったAIエージェントが集団をつくって生存競争を繰り広げたら、世代が進むにつれどのような社会が出来上がるかを検討しました。
実験では、利己的な性格を持った集団から協力的な性格を持った集団へ次第に進化していく様子が観察されました。一方、協力的すぎる集団は再び利己的なエージェントに取って代わられるなど、エージェント社会にも人間社会と同様に動的な側面があることが分かりました。また、例えば「gently(優しく)」が性格の記述に含まれるエージェントは特に協力しやすいなど、行動をよく特徴づける言葉があることも分かりました。
この成果は、LLMを進化モデルに組み込み詳細な言語表現を用いることで人間の性格特性の進化的基盤について検討できることを示すと同時に、人間社会に貢献するAIエージェントが持つべき特徴や、AIエージェントに対する人間の接し方、遠くないうちに来るだろうAI社会やAIと人間が混在する社会の設計指針につながる知見をもたらすことが期待されます。
本研究成果は、2024年3月19日19時(日本時間)付国際科学誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されます。
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2024/03/ai-ai-1.html