シンポジウム「刑務所ラジオの現在:社会的包摂を目指すケアのコミュニケーション」を開催しました。

1.会議名称:「刑務所ラジオの現在:社会的包摂を目指すケアのコミュニケーション」
2.開催期間:令和6年2月10日(土)
3.開催場所:名古屋大学野依学術記念交流館
4.参加者数:総計180名

5.実施内容

2024年2月10日、放送文化基金の助成を得て、研究室主催、名古屋大学大学院情報学研究科共催で『刑務所ラジオの現在:社会的包摂を目指すケアのコミュニケーション』と題したシンポジウムを名古屋大学野依記念学術交流館にて行いました。

まず、英国で、受刑者による受刑者のためのラジオ局を運営する Prison Radio Association においてアドバイザーを務め、世界10カ国以上の刑務所ラジオ製作者が参加するPrison Radio Internationalも主導するDr.Ruth Armstrong氏に基調講演をしていただきました。

英国での刑務所ラジオは基本的に毎日24時間放送。受刑者自身がDJを務め、出所後に役立つ情報提供のほか、刑務所の重鎮と直接対話し、施設や待遇についての質問をする番組もあるそうです。これは英国の刑務所ラジオを牽引したBBC出身のPhil Mcguire氏が、この活動を受刑者らの娯楽としてだけでなく、圧倒的な権力を有する刑務所における監視や接遇改善につながるようなジャーナリスティックな活動としても意味づけていきたいという強い志に基づくものだそうです。

芳賀さんからは、日本の刑務所ラジオの歴史と現状とともに、アンケート調査に基づき、受刑者たちがラジオを通じて承認を求めたり、自分の更生に生かそうとする様子が報告されました。またご自身がコミュニティラジオで制作し、少年院の中でも聞かれている「コウセイラジオ」について充実した報告をしていただきました。

続いて、元札幌矯正管区長で、福山大学心理学科教授の中島学先生にご登壇いただきました。沈黙を強いる日本の刑務所では、言葉が奪われることで、かえって受刑者らの再社会化の道を閉ざしてしまう可能性があること。耐えることしかできないために、物事を物語的に理解できず、今に集中してしまう傾向があることなどが報告されました。そして社会に戻っても「対話モデル」を形成してくれる空間、時間、仲間、手間という4つの間が必要とされると問題提起されました。

その後、東京のコミュニティFM ラジオフチューズで元受刑者としてラジオ番組を有する「クマさん」から、ラジオなどで社会に向けて発信する意義についてのご報告がなされました。番組を制作し、録音し、広報するという一連の作業の中で非常に多くの学びが得られること、できたときには自己肯定感がアップすること、社会で生きる上でのバランス感覚を身につけるためのトレーニングになっていることなどが報告されました。

パネルディスカッションでは英国のラジオの雰囲気を少し味わいつつ、それぞれの登壇者に、英国での課題、日本での現状と展開可能性などについての質問に答えていただきました。来場者アンケートでは、もう少し時間が長くてもよかったのではないかというご指摘をいただきました。確かに、現状の説明などは少し足りないところもあったと思いますし、短い時間で終わらせてしまうのはもったいない充実度でした。

刑務所ラジオというとてもニッチなテーマについてのセッションでしたので、来場者があるか心配しましたが、会場は30名弱だったものの、オンデマンドでは150名以上が登録をして下さいました。メディアの方の関心が高かったようです。

(上記報告はhttps://mediaconte.net/ogawa/2024/02/

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を転載したものです。

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